この物件はご成約いたしました。お問い合わせありがとうございました。
実際には、古民家と呼ばれ80年以上生き続けている家もありますが、日本の木造住宅の平均寿命はだいたい30年といわれています。

織田信長に所縁もある“越前二の宮　劒神社”から歩いて3分。民家の間の雰囲気のある細い道を抜けた場所。
ここに“100年暮らす”という想いで建てられた家があります。
それは、家になる前の樹から選び抜き、手間暇かけて乾かされ、職人さんたちの手によって実に2年という長い年月をかけて丁寧に建てられました。
そして今。この家が息づいてから約40年の年月が経ちました。
そうはいっても、木造家屋40歳。そろそろメンテナンスが必要か、と思いながら伺ったその家は健康そのもの。
手ずれた美しさも備わって、健やかに建っていました。
築40年。家は住んでからが本当の始まり。すぐれた住まい手が暮らしたとき、すばらしい居住空間になるのだと分かる家です。

土地699.86㎡（211.70坪）
建物　母屋（木造瓦葺き2階建て）275.75㎡（83.41坪）
離れ（木造瓦葺き平屋建て）30.98㎡（9.37坪）
蔵（土蔵造り瓦葺き2階建て）90.38㎡（27.33坪）
その他、川向かい（敷地南側）に車庫、倉庫として使用可能な建物2棟と駐車スペース

不動産業をしていて、たくさんの家や土地を観させていただいてきました。
路線価や築年数、その物件の価値を測るものさしはいろいろありますが。個人的に、どんな住まい手に使われてきたかというのでも、その物件の価値が変わると思っています。
ユーモアとアイロニーに溢れ、手編みのニット帽をかぶり、艶やかな小柄な女性。というのが、この家の価値をさらに高めたであろうオーナーの最初の印象です。
いつも家のどこかを磨き、毎年10月には家中の網戸を外しきれいに洗って蔵にしまう。
どうしても埃っぽさやかび臭さがでてきてしまう蔵さえ、埃一つ見当たりません。

11DKの母屋と渡り廊下でつながった離れと蔵という間取り。
陽の光、風の通りを考えて設計されています。
1日中家のどこかの部屋に陽が射すので、お日様と追いかけっこをするように家のどこかに何かを干せるのよ、といたずらっぽく笑います。
檜や欅といった贅沢な材料をふんだんに使われた室内は、まるで森林浴をしているかのように心地よい空間です。
家の呼吸のために、床は高く造られています。風通しの良さは言うまでもないのですが、こういった家を想ってつくった職人さんの一つ一つの心配りが今も健やかに育つ家の秘訣なのかなと感じました。

家のいたるところで、職人さんの手による見事な建具や装飾が見られます。
その中でも、家族の1番のお気に入りだった場所は10畳2間の和室に沿った広縁とも呼ばれる広い縁側。畳が敷き詰められる計算の広縁は、多くの客人を招くとき畳を敷いて和室を広げることもできるという、日本従来の可変性のある住宅建築の知恵です。
そんな広縁からは自慢の庭が一望でき、見渡し良し。そして、日当たりも風通しも良好です。
雪解けを迎えた庭先には、みどりの苔の絨毯が広がり、木々たちは悠々と枝葉を伸ばし春の日差しを謳歌していました。それは、おだやかで大きくて、自然の寛容さを強く実感できる庭でした。
奥に見える門は、平成18年に洗い屋さんと呼ばれる専門の職人さんに依頼され、文字通り“洗われて”建設当時の色に戻されたそう。とても清々しく建っています。